なぜ日本ではコード決済が「完全制覇」できないのか?普及を阻む3つの壁

2025年11月28日

なぜ日本ではコード決済が「完全制覇」できないのか?普及を阻む3つの壁
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近年、PayPayや楽天ペイなどの普及により、日本のキャッシュレス化は急速に進んでいます。しかし、中国や韓国のような「現金を持ち歩かなくても生活できる」レベルには達しておらず、依然として現金信仰が根強いのも事実です。

なぜ、技術大国であるはずの日本でコード決済(QRコード決済)の完全な浸透が遅れているのでしょうか?そこには、店舗側の切実な事情、サービスの乱立、そして災害大国ならではの懸念という、3つの大きな理由が存在します。

## 店側の手数料の高さと「見えない利権」

コード決済導入の最大の障壁となっているのが、加盟店手数料(決済手数料)です。

### 利益を圧迫する手数料負担

利用者にとっては「ポイント還元」などのメリットが大きいコード決済ですが、店舗側にとっては売上の約2%〜3.25%前後を手数料として支払う必要があります。薄利多売の飲食店や個人商店にとって、この数パーセントは利益に直結する大きな痛手です。

  • クレジットカード: 3%〜5%程度(さらに高い)
  • コード決済: 1.6%〜3.25%程度
  • 現金: 手数料0円(管理コストはかかるが、直接的な支出は見えにくい)

初期の普及キャンペーンで「手数料無料」を謳っていた期間が終了し、有料化されたタイミングで利用を停止した店舗も少なくありません。

### 政治と既存金融の「利権」構造

また、普及が遅れる背景には、既存の金融システムやクレジットカード会社、銀行などの複雑な利権構造も指摘されています。海外(特にEUや中国の一部)では、政府主導で手数料の上限を低く抑える規制が導入されていますが、日本では既存業界への配慮もあり、大胆な手数料引き下げの強制力が働きにくい現状があります。

「現金決済のインフラ」を守りたい勢力と、「新しい決済」を推進したい勢力の綱引きが、結果として店舗負担の高止まりを招いています。

## 類似サービスの乱立による「不便さ」

「〇〇ペイ、使えますか?」「うちは✕✕ペイしか使えません」

このようなやり取りをレジで経験したことはないでしょうか?日本特有の課題として、類似サービスの乱立(ガラパゴス化)が挙げられます。

### 「使える・使えない」の分断

主要なサービスだけでも以下のように多数存在します。

  • PayPay
  • 楽天ペイ
  • d払い
  • au PAY
  • メルペイ

店舗側はこれらすべてに対応しようとすると、管理画面が複雑になり、レジ周りはQRコードのスタンドで埋め尽くされてしまいます。一方、利用者も「この店では自分のメインのアプリが使えない」というストレスを感じることが多く、結果として「現金ならどこでも使えるから安心」という結論に至ってしまいます。

サービスの統一や相互利用(インターオペラビリティ)が十分に進んでいないことが、利便性を著しく下げているのです。


## 「有事」に使用できない脆弱性

そして、日本において最も無視できない理由が、自然災害です。

### 災害大国ニッポンのリスク

地震や台風などの災害が多い日本では、停電や通信障害がいつ起こるかわかりません。コード決済は、その仕組み上、以下のインフラが必須です。

  • 電力(スマホの充電、店舗端末の電源)
  • インターネット通信(決済データの送受信)

大規模な災害が発生し、停電やキャリアの通信障害(圏外)が発生した瞬間、コード決済はただの画像データとなり、一切の支払いができなくなります。「北海道胆振東部地震」のブラックアウトや、過去の通信キャリアの大規模障害の際、電子決済のみに頼っていた人々が食料や水を買えずに困窮する姿が報道されました。

この経験が、「もしもの時のために、やはり現金は手放せない」という強い現金信頼(あるいはリスクヘッジ)につながっています。


## まとめ

日本でコード決済が完全に浸透しない背景には、単なる「遅れ」ではなく、合理的な理由が存在します。

  1. 店舗の利益を削る手数料構造と政治的背景
  2. 乱立するサービスによる利便性の欠如
  3. 災害時の脆弱性への不安

これらが解消されない限り、日本から現金が消える日はまだ遠いと言えるでしょう。


## 参考資料リンク